今週は多くの中央銀行が金融政策の発表を予定しており、投資家にとっては非常に忙しい週となるだろう。特に注目なのが31日のFRBによる政策金利の発表だが、その他にも米中貿易協議、7月雇用統計、ユーロ圏GDP、アップル等の決算報告が控えている。
以下が今週注目の経済指標である。
1.FRB政策金利
FRBは30-31日に開かれるFOMCで約10年半ぶりの利下げを決定することが広く予想されている。市場は今月中旬には0.50ポイントの利下げを予想していたが、現在は経済指標や直近の要人発言から0.25ポイントの利下げがメインシナリオとなっている。
FRBは利上げや継続的なバランスシート縮小について、度々トランプ米大統領から非難されてきた。同氏はFRBの金融政策が米国成長を縮小させているとしている。
量的引き締めとも言われているバランスシートの縮小は9月に終了する予定だ。しかし縮小があと1ヶ月は続くことを受け、投資家は金利とバランスシートという2つの経済指標が逆の結果を示すという状況にフラストレーションを溜めている。
2.英中銀、日銀会合
各中央銀行の会合が続く中、英中銀が1日に発表する政策金利は現状維持となると予想されている。
また英中銀については、現在低迷している英国経済の査定や、ボリス・ジョンソン新首相が「合意無き離脱」を強行した際の対応にも注目が集まっている。
「合意無き離脱」への懸念が高まる中、ポンドは5月以降5%以上下落している。ジョンソン氏は就任してまだ1週間も経っていないが、10月31日のEU離脱を約束しており、また離脱案の見直しを求めEUと衝突している。
また29-30日にかけて行われている日銀会合においても、政策金利を据え置くことが予想されており、また金利の維持に対するコミットメントを強化することも見込まれている。世界各国の中央銀行がハト派姿勢を強める中で、先週に欧州中央銀行(ECB)が金利据え置きを決定したことによって、日銀も今回利下げに距離を置きやすくなるだろう。
3.米中貿易協議
米中貿易協議は30日から再開される予定で、ライトハイザー米通商代表とムニューシン米財務長官が上海を訪問し、中国の劉鶴副首相らと会談を行う予定だ。
2020年11月の大統領選挙におけるトランプ氏の再選キャンペーンはまだ本格化しておらず、また米国株式は過去最高値を記録していることもあり、トランプ氏は合意についてそれほど大きなプレッシャーを感じてはいないだろう。ただし市場は同氏が何らかの実績を残すことを望んでいる。
5月に行われた前回の協議は合意に至らず、トランプ氏は中国からの2000億ドル相当の輸入品に対し、関税を10%から25%に引き上げ、さらに3000億ドル相当の輸入品に対して今後25%の関税をかけると脅しをかけた。
4. 米雇用統計
今週は経済指標の発表が多く予定されているが、7月の米雇用統計が話題を攫いそうだ。コンセンサス予想では16万人増となっており、6月の22万4000人増よりは減速する見込みだ。失業率が3.6%に減少する一方で、平均時給は前月比0.2%増、前年同期比3.2%増となる見込みだ。
製造業、貿易、中古住宅販売保留指数、個人所得、消費者信頼感等の発表も今週中に予定されている。FOMC後に大量の経済指標が発表され、金利変動が必須であったのかを確かめる機会となりそうだ。また、今年の金融政策の動向を占う上でも参考となる。
他方で、31日には第2四半期ユーロ圏域内総生産(GDP)と、7月消費者物価コア指数の発表が予定されている。同日の経済指標発表は、経済成長の減速と、インフレ率がECBの目標である2%を引き続き下回っていることを示す結果に終わりそうだ。
5. 企業決算
今週、S&P 500構成銘柄の内170社以上が決算報告を予定している。 アップル、ゼネラル・エレクトリック(NYSE:GE)、スポーティファイ(NYSE:SPOT)、クアルコム(NASDAQ:QCOM)、ベライゾン(NYSE:VZ)、ゼネラルモーターズ(NYSE:GM)、エクソンモービル(NYSE:XOM)等が含まれている。
アップルの第3四半期決算では、米中貿易摩擦が続く中、特に中国において同社デバイスの売上を伸ばせたのかという問いの答えを求められており、市場の注目が集まっている。同社は、中国においてiPhoneの売上が17%減となった事を主な原因として、前四半期売上高が前年同期比5%減となったと発表している。
利益向上を支えた同社の「サービス部門」も注目されている。
アップル(NASDAQ:AAPL)の株価は年初来33%高となっており、26日の終値は207.74ドルとなっている。