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先週みられた株式市場反発の理由
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投資家はタカ派なFRBおよびオミクロン株の感染拡大を受け入れているようにみえるが、来年は地合いが変わる可能性に注意
12月にFRBはタカ派なスタンスへと転換し、オミクロン株はこれまでの変異株と比較して感染力が最も強く、引き続き驚異となっている中で、株式市場の主要4指数S&P 500種指数、 Dow Jones、NASDAQ、Russell 2000はいずれも短縮取引日となった木曜日に上昇して引けた。また、先週は週次ベースでも上昇がみられ、S&P500種指数は最高値に近づいている。
2022年もFRBは金融緩和策の縮小を続けるとみられ、金利先高感が意識されているが、投資家はリスクを取るスタンスを続けている。年末も株式市場は上昇基調を継続するかもしれない。
嵐の前の静けさなのか、嵐が去った後の静寂なのか
過去数年来でFRBのスタンスは最もタカ派になったにもかかわらず、市場の反応は良くも悪くも限定的である。FRBがどのように金融緩和策から抜け出すのかについて何年間もこれまで注視してきた。これまでは金融緩和策の縮小が起きると、株式市場は混乱(タントラム)がみられた。今回、整式にFOMCはタカ派へと転換したが、投資家からの反応は非常に薄い。
これは不思議な状況だ。直近みられている株式市場の上昇は、機関投資家かすでに年末休暇に入り、個人投資家が中心に取引をしていることによる薄商いが理由かもしれない。このような状況は今週も続くだろう。
こうなってくると今の薄商いの状況は、嵐の前の静けさなのか、それとも嵐が去った後の静寂なのか判断がつかない。しかし今後も下落圧力がかかる可能性には注意が必要だ。
また、オミクロン株の感染被害に関する報道に対する市場の反応も少ないが、感染力の強さには注意が必要だ。デルタ株と比較して、重症化リスクは低いかもしれない一方で、感染者数自体が大きければ当然重症化する患者の絶対数は増える。
新たな変異株の出現は市場の先行指標になるかもしれない。保健当局が警戒している通り、今後も変異株が完全に分析しきれていない中で新たな変異株が出現するかもしれない。そのような中、アメリカ食品医薬品局(FDA)はPfizer (NYSE:PFE)およびMerck (NYSE:MRK)が製造したコロナウイルスの経口治療薬に使用許可を与えたことは投資家に安心感をもたらしている。
今後数週間は株式市場で反発がみられるかもしれない。1928年以来、クリスマスから年末年始休暇中に約79%の確率でS&P 500種指数は上昇している。平均上昇率は1.7%だ。
株式市場は年初来25%上昇し、クリスマス休暇中の値上がりはこの上昇基調を後押しするものとなっている。この様子はS&P 500種指数のテクニカル・チャートでもみてとれる。
S&P 500種指数は、ヘッズ・アンド・ショルダー(H&S)の継続パターンを形成している。移動平均収束拡散(MACD)と相対力指数(RSI)は、価格とモメンタムが過去最高値をブレイクアウトする準備ができていることを示している。
株価を押し上げる可能性のある注目すべきファンダメンタルズのテーマは、バイデン米大統領が提出した1兆7500億ドル規模の「Build Back Better」と呼ばれる気候・社会支出法案の動向だ。この法案は、ウエストバージニア州のJoe Manchin上院議員が土壇場で支持を撤回したため、可決に必要な1票が足りなくなり、株価の急落へとつながった。
リスク選好や経済に対する投資家のセンチメントを探るために米国債の動向をみることが多いが、現時点では米国債利回りは十分に明確なシグナルを発していない。
米国10年債利回りを含む金利は、200日平均移動線を再び上回り、トップのネックライン(H&S、ダブル・トップ?)の役割を担う可能性がある。しかしシンメトリカル・トライアングルと思われるレジスタンスを受けていることから、まだトップをフェイルしたと呼ぶには不十分な状況だ。
これは継続的なパターンであることが多く、トップから来ているのでブレイクアウトの可能性が高くなる。このような場合となれば、投資家が安全資産に投資資金を戻していることを意味し、株式にとってはネガティブな兆候といえる。
米ドル は、金利と正の相関を示す傾向がある。米ドルも上昇基調が弱まっている中で何らかの新しい方向性を探っている様子だ。
当初は、短期のペナントがアセンディング・トライアングルになるのではないかとみていた。これは強気トレンドとみなされ、買い手がさらに上を目指そうとしていることを示す。一方で、売り手はあまり乗り気ではなく、現在の水準で売ろうとしていない。
強気派はこのパターンを踏み台にして、米ドルの上昇基調が勢いを増し、より急な上昇チャネルに送り込んでいる。
金は、米国債のように、動向がつかめないでいる。どちらも安全な資金の避難場所と考えられているが、状況は変化しており、金に対する見方も変わってきている。
現在、金価格は上昇圧力を受けているようにみてる。金はH&S継続パターン(またはシンメトリカル・トライアングル、意味するシグナルは同じ)を形成している可能性がある。1900ドルを突破すれば、2020年8月につけた高値を試す展開になるだろう。
ビットコインは、木曜日に12月3日以来の高値まで上昇した後、週末はほとんど横ばいでの推移となった。最近、押し目買いについて話題に上がることが多い。しかし、ビットコインは11月に付けた高値を下回っているものの、過去12カ月で価格自体は2倍以上になっていることには注意が必要だ。
そう考えると、今の価格はすでに空前の高さだともいえる。また、ビットコインのテクニカル・チャートにも憂慮すべきものが確認できる。
BTC/USDは、4月の高値以降、上昇ウェッジを形成している。このパターンには、全力を尽くして買い支えたものの上昇基調を維持できなかった買い手の挫折した希望が含まれている。
価格はこの水準以上に達していない。今も4月と11月のピークの間での推移となっている。このパターンは、29,000ドル近辺をネックラインとするダブル・トップの形成にもなり得る。もしそうなれば、0ドル近辺が暗黙のターゲットとなるだろう。
原油 は週末を前に3日連続で上昇をみせ、12月8日以来の最長の連騰記録を更新し、1ヶ月ぶりの高値を記録した。しかし、テクニカル面では、この上昇が長続きしないことが懸念される。
上昇基調は4月27日から形成されている上昇トレンドラインを下回り、上昇トレンドのH&Sトップを形成した可能性がある。
今週の予定
すべて米国東部時間で記載
月曜日
豪州、カナダ、英国など多くの国がクリスマス休暇
火曜日
10:00:米国 – CB 消費者信頼感指数: 前回は109.5を記録
水曜日
10:00:米国 – 中古住宅販売保留指数: 前回の7.5%から0.6%までの低下を予想
10:30: US – 原油在庫量: 先週は4.715百万バレル減少
木曜日
8:30:米国 – {{ecl-294||新規失業保険申請件数}: 205,000件で横ばいを予想
20:00: 中国 – 製造業 PMI: 50.1から49.6への低下を予想
金曜日
ブラジル、日本、シンガポール、ロシア、ドイツ、スイス、英国など多くの国が年末休暇