[10日 ロイター] - <為替> ドルが対ユーロで上昇し4カ月ぶりの高値を付けた。新型コロナウイルスの感染拡大を背景に安全資産への買いが強まった。欧米経済指標で明暗が分かれていることも対ユーロでのドルの相対的な魅力を高めた。
10日0500GMT(日本時間午後2時00分)時点の中国本土の新型コロナウイルス感染者は4万0235人、死者は909人に達した。また海外24カ国での感染者は319人、死者は1人。
市場では新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済見通しに悪影響を与えると懸念されている。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの外為戦略部門グローバル責任者、ウィン・シン氏は前週末に発表された1月米雇用統計や12月独鉱工業生産、この日発表された予想を下回るイタリアの12月工業生産などに触れ、「米経済指標が予想をはるかに上回っている一方、欧州の経済指標は予想をはるかに下回っている」と指摘。[nL4N2A741P][nL4N2A72ER]
さらに「コロナウイルスを背景に安全資産への買いが見られる。これらが新興国通貨の重しとなり、ドルが恩恵を受けているほか、ドルほどではないにしろ円やスイスフランの追い風にもなっている」と述べた。
この日は、ドイツのメルケル首相の後継者として最有力候補であった与党キリスト教民主同盟(CDU)のクランプカレンバウアー党首が2021年の選挙戦に出馬しない意向を明らかにしたこともユーロに逆風となった。[nL4N2AA3UA]
ユーロ (EUR=)は1.0907ドルと4カ月ぶり安値。その後は1.0914ドルとやや値を戻した。ポンドは一時1.2870ドルと2カ月ぶりの安値を付けた後、1.2917ドルまで切り返した。
豪ドルは一時0.6656米ドルと2009年以来の安値まで下落。その後は0.6679米ドルで推移した。
<債券> 国債利回りが低下した。新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響が懸念され、安全資産への買いが継続。長短金利差が逆転した。
3カ月物財務省短期証券 (US3MT=RR)と10年債 (US10YT=RR)の金利差は取引序盤で逆転し、終盤ではマイナス1.21ベーシスポイント(bp)で推移。同金利差は前週にも逆転する場面があった。
新型肺炎による死者数が週末に2002─03年に世界的に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の死者数を上回ったこと受け、安全資産である米国債への買いが継続し、利回りが押し下げられた。[nL4N2AA093]
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長によると、10日0500GMT(日本時間午後2時00分)時点の中国本土の新型コロナウイルス感染者は4万0235人、死者は909人に達した。また海外24カ国での感染者は319人、死者は1人。
地政学的または経済的に不安定な局面で安全資産として機能する米国債は年初から買いが続いている。10年債利回り (US10YT=RR)は昨年末に比べ18.7%下落。この日終盤は2.5bp低下の1.553%だった。
DAダビッドソンの債券トレーディング部門バイスプレジデント、メアリー・アン・ハーレー氏は、市場の変動要因は「新型コロナウイルスが収まらないとの懸念だ。世界の成長率に大きな影響を及ぼし、リセッション(景気後退)入りの転換点になりかねない」と述べた。
米国債のイールドカーブは全体的に低下。2年債利回り (US2YT=RR)は2bp低下の1.379%。30年債利回り (US30YT=RR)は1.9bp低下の2.024%だった。
今週11日には新発3年債で380億ドル、12日には10年債で270億ドル、13日には30年債で190億ドルの入札が予定されている。新型肺炎を巡る懸念を背景に堅調な需要が見込まれている。
また今週11─12日にはパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言も予定されている。
ハーレー氏は「パウエル議長は新型コロナウイルスの影響やFRBの対応について多くのコメントを求められるだろう」と述べた。
<株式> S&P総合500種とナスダック総合は終値ベースで過去最高値を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大で混乱した中国の春節(旧正月)が明け、中国企業が順次操業を再開していることが押し上げ要因となった。
この日は特にアマゾン・ドット・コム (O:AMZN)、マイクロソフト (O:MSFT)、グーグルの持ち株会社アルファベット (O:GOOGL)などに買いが入ったことで、主要3指数はそろって上昇した。
中国を発生源とする新型ウイルスについては世界保健機関(WHO)がこの日、中国に渡航歴のない患者からの感染がより広範な流行につながるきっかけになる可能性があると懸念を表明。テドロス事務局長は、中国に渡航歴のない患者からの感染について「懸念される症例」が出ているとし、「より大火を引き起こす火花になり得る」との懸念を示した。[nL4N2AA3RF]
新型ウイルスに対する懸念は払拭されていないものの、市場関係者は中国政府がこのほど刺激策を発表したことに加え、米企業決算が全般的に好調で、米経済指標も堅調な中、米株に買いが入っているとの見方を示している。
キングズビュー・アセット・マネジメント(シカゴ)のポートフォリオ・マネジャー、ポール・ノルテ氏は「中国政府が投入した刺激策は世界中に拡散し、買いが刺激されている」と指摘。「米経済は成長している」とし、米株に買いを入れる根拠となっていると述べた。
第4・四半期の米企業決算発表は終盤に差し掛かり、S&P総合500種構成銘柄のうち324社がこれまでに決算を発表。リフィニティブによると、このうち70.7%が市場予想を上回った。アナリストは第4・四半期の企業利益は合算で前年同期比2.3%増になると予想。1月1日時点では0.3%減が予想されていた。
個別銘柄ではテスラ (O:TSLA)が3.1%高。上海の工場が操業を再開したことが好感された。
医薬品大手イーライリリー (N:LLY)は0.6%安。スイスの製薬大手ロシュ (S:ROG)と共同開発しているアルツハイマー型認知症の治療薬の効果が確認できかなかったことが嫌気された。
ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を1.50対1の比率で上回った。ナスダックでも1.46対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は66億株。直近20営業日の平均は76億6000万株。
<金先物> 新型肺炎の拡大懸念を背景に安全資産として買われ、4営業日続伸した。4月 物の清算値は前週末比6.10ドル(0.39%)高の1オンス=1579.50ドルと、 中心限月ベースで1週間ぶりの高値となった。
<米原油先物> 新型肺炎がもたらすエネルギー需要減退への懸念が重しとなり、続落した。米 国産標準油種WTIの中心限月3月物の清算値は、前週末比0.75ドル(1.5%)安 の1バレル=49.57ドルと、再び50ドルの節目を割り込み、2019年1月以来約 1年1カ月ぶりの安値に沈んだ。4月物は0.77ドル安の49.78ドルだった。
ドル/円 NY終値 109.74/109.77
始値 109.77
高値 109.79
安値 109.65
ユーロ/ドル NY終値 1.0909/1.0913
始値 1.0948 (EUR=)
高値 1.0952
安値 1.0909
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 107*19.00 2.0335% (US30YT=RR)
前営業日終値 107*12.50 2.0420%
10年債(指標銘柄) 17時05分 101*22.00 1.5628% (US10YT=RR)
前営業日終値 101*18.00 1.5770%
5年債(指標銘柄) 17時05分 99*31.25 1.3799% (US5YT=RR)
前営業日終値 99*28.00 1.4010%
2年債(指標銘柄) 17時05分 99*31.38 1.3850% (US2YT=RR)
前営業日終値 99*30.50 1.3990%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 29276.82 +174.31 +0.60 (DJI)
前営業日終値 29102.51
ナスダック総合 9628.39 +107.88 +1.13 (IXIC)
前営業日終値 9520.51
S&P総合500種 3352.09 +24.38 +0.73 (SPX)
前営業日終値 3327.71
COMEX金 4月限 1579.5 +6.1
前営業日終値 1573.4
COMEX銀 3月限 1778.5 +9.3
前営業日終値 1769.2
北海ブレント 4月限 53.27 ‐1.20 (LCOc1)
前営業日終値 54.47
米WTI先物 3月限 49.57 ‐0.75 (CLc1)
前営業日終値 50.32
CRB商品指数 168.8747 ‐1.2470 (TRCCRB)
前営業日終値 170.1217
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