- 欧州株式と米国先物はゆるやかに上昇
- アジア市場は、金曜日の米国の中国に対する追加関税を控え、過去一年間の最安値
- STOXX Europe 600は自動車製造株がけん引して上昇した。これは自動車への貿易摩擦の懸念が後退したことによる。
- 欧州中央銀行(ECB)の金融政策引き締め姿勢と、ドイツ製造業受注の指標をうけて、欧州市場はゆるやかに上昇
- ポンドは5月のブレジット(EU脱退)の停滞を切りぬけられた
- シンガポールの鉄鉱石は、貿易見通しの悪化により4月以来最低水準に転落
- 原油価格は需給バランスの問題が浮上
貿易摩擦と世界経済
S&P 500、 Dowおよび NASDAQ 100の米国の株式指数先物は、木曜の米国市場で早い段階から反発をみせた。ヨーロッパ市場での株価の立ち直りが、株式が今年一番の安値水準に転落したアジア市場の不振を振り払ったといえる。
現在、投資家の関心は、金曜に期限を迎える中国製品へ340億ドル相当の関税を課すとした貿易摩擦の行方に向かっている。
米国とEU(欧州連合)が、自動車貿易での輸入関税の引き下げに向けた交渉を進展させるとの期待があり、自動車株が上昇。これにつられるようにヨーロッパの株価指数先物は木曜に1週間の最高値レベルに上昇した。
ECBが金融引き締めを進める中、ECBが国債の買い入れ終了を示唆している背景があり、ユーロは上昇した。
ユーロもまた、ドイツ連邦統計局(Federal Statistics Office)からの明るい数字によって活気づいた。これは、ドイツ製造業受注が1.1%の予測を大幅に上回り、2.6%上昇したことによる。
このデータは、ぱっとしないヨーロッパの経済指標に歯止めをかけ、2年物 ドイツ債が過去2週間の高値となった。
しかし、IMFは、2018年のドイツの経済成長予測を2.5%から2.2%に引き下げた。これは、世界貿易戦争とBrexitの両方が市場の効率を脅かす恐れがあることを挙げている。
おそらくこの下方修正は、大局的に考えると、ユーロの上昇は止まると考えられるからだろう。
一方、メイ英首相によって欧州連合(EU)離脱後の通商関係に関する妥協案が明るみになった後ではあるが、ポンドはなんとか上昇した。
この合意の詳細がないため、もしさらなるEU離脱がおこれば、英国はEU加盟国よりも多くを失うリスクが高くある。ユーロに対して、ポンドは弱くなるだろう。
世界経済の懸念
オーストラリアのS&P/ASX 200を除く、アジアの主要株式指数はすべてここ1年の最低水準まで下落した。テクニカル指標は全面的に弱気シグナルだ。
日本
日本のTOPIXは、100日間の移動平均線が200日間の移動平均線をしたまわり、6月下旬に大きく下落した。現在、50日間移動平均線は急激におち、200日間の移動平均線に接触しようとしている。デットクロスは目の前だ。万が一、3月26日につけた1645.16を割るようであれば、長期にわたるダウントレンドに転換するだろう。
中国
中国の上海総合指数は、0.72%の下落となり、2日間で1.8%低下した。
中国本土株は7週間中6週連続で低下する見通しで、TOPIXのようにデットクロスを控えている。指数は、2016年2月以来の低水準に達し、2016年の1月から3.4%の差しかない。次の注目すべき数字は、2013年に起こったような30%の下落、1850くらいの水準だろう。
香港
香港のハンセンは、2016年2月以来の上昇トレンドラインから2.5%到達後、1.6%下落し0.67%に下げた。
韓国
韓国のKOSPIは0.4%の値下がりで、2017年5月以来の低水準だ。
オーストラリア
オーストラリアのS&P/ASX 200は引き続き好調であり、アジア市場のダウントレンドとは逆である。木曜日に、0.5%以上の上昇をみせて高値付近で終値をつけた。
アメリカ
米国市場は、火曜日に陰線をつけて終わった。テクノロジー株と金融株が弱いことが、主要株価指数に影響を与え、上昇分を打ち消して下落した。このトレンド転換は、中国の裁判所がマイクロン・テクノロジー(NASDAQ:MU)のチップ販売を一時的に禁止したことによるものだ。これは追加関税の期限を控え、緊張していた市場のセンチメントに悪影響を与えた結果だ。
株価指数:ダウ・ジョーンズ
ダウ・ジョーンズは、海外展開をする大企業群が上場しており、貿易摩擦の影響が受けやすい。ダウは6月の25400から徐々に下がり下落相場の中、三角持合いを形成(上図)している。さらなる不安材料は、この三角持合いは200日間の移動平均線の下で形成されている。一方、その三角持合いは4月以降の上昇トレンドラインの上であることが確認できる。
商品:シンガポール鉄鉱石
商品先物もまた、世界的な貿易摩擦の影響を受け、下落している。鉄鉱石先物は、2017年6月以降の上昇トレンドを下回った後、4月の最低水準まで下落した。
商品:原油(WTI)
他の商品では、原油(WTI)は火曜日に、75ドルを切ったことにより下落した。投資家たちのサウジアラビアの生産増とは反して、米国国内での供給が縮小される可能性が意識されている中で下落は起こった。
これらは、トランプ大統領のOPECに向け生産増加の要求するツイートした後に下落が起きた。
中間選挙が控えている中、WTIの原油価格が1バレル当たり75ドルを下回っていることが必要だ。
アナリストらは、限られた供給と、世界的な需要の増加のアンバランスは、原油価格が上がり続けることを示していると語る。
米国石油協会(API)は、6月29日をもって一週間で米国原油在庫は450万バレル下落したと火曜日に報告した。これらは過去3年の最高値付近を記録した同日であった。エネルギー情報局(EIA)は、同じ週に米国の在庫がさらに520万バレル減少したと報告し、7週連続の減少となった。
テクニカル的には、原油価格(WTI)は三角持合い、レンジ、上抜けを考慮しながらトレードされている。注目してほしいのは、今年に入ってからのチャネルライン上部に、三角持合いが形成されていることだ。これが意味するのは、上昇相場になるか下落相場になるかの最後のバトルグラウンドだということだ。