*12:08JST 日経平均は反発、足元の底堅さ継続も先安観を拭えない
日経平均は反発。
223.68円高の29173.56円(出来高概算6億2645万株)で前場の取引を終えている。
8日の米株式市場でダウ平均は55.69ドル安(-0.16%)と小反落。
地銀セクターの株価回復で金融不安が緩和したが、連邦政府の債務不履行リスクが警戒され上昇スタート後に下落に転じた。
また、米連邦準備制度理事会(FRB)による銀行融資担当者調査で融資基準が一段と厳格化したことなどが確認されると売り圧力が強まった。
一方、今週予定されている重要インフレ指標の発表を前に下値も限定的で、終盤にかけては下げ幅を縮小した。
ナスダック総合指数は+0.17%と小幅続伸。
米株高を引き継いで日経平均は70円高からスタートし、29000円を回復。
為替の円高一服や米ハイテク株の上昇を支援要因に前場中ごろからは騰勢を強める展開となり、前引け直前には29189円と240円程にまで上げ幅を広げた。
個別では、レーザーテック (TYO:6920)、アドバンテスト (TYO:6857)の半導体や、太陽誘電 (TYO:6976)、イビデン (TYO:4062)、富士電機 (TYO:6504)、三井ハイテック (TYO:6966)などのハイテクが全般上昇。
三井物産 (TYO:8031)、住友商事 (TYO:8053)の商社も総じて高い。
三井住友 (TYO:8316)、第一生命HD (TYO:8750)の銀行・保険のほか、INPEX (TYO:1605)、石油資源開発 (TYO:1662)の鉱業、住友鉱
(TYO:5713)、DOWA (TYO:5714)の非鉄金属も堅調。
今期の増益・増配見通しなどが好感されたJFE
(TYO:5411)と東京鐵鋼 (TYO:5445)が揃って急伸し、日本製鉄 (TYO:5401)、神戸製鋼所 (TYO:5406)などは連れ高。
川崎汽船 (TYO:9107)は株主還元の強化が評価されて大幅高となり、本日決算発表予定の郵船 (TYO:9101)も連れ高。
マクニカHD (TYO:3132)、LITALICO (TYO:7366)、インソース (TYO:6200)
なども決算を材料に大幅に上昇した。
一方、今期の大幅減益見通しが失望された東邦チタニウム (TYO:5727)が急落し、12日に決算を予定している大阪チタ (TYO:5726)も連れて大幅安。
リコー (TYO:7752)、ユニ・チャーム<
8113>、新日本科学 (TYO:2395)、GMOペパボ (TYO:3633)なども決算が嫌気されて大幅に下落している。
セクターでは鉄鋼、海運、保険が上昇率上位に並んだ一方、精密機器、空運のみが下落となった。
東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の80%、対して値下がり銘柄は16%となっている。
注目されていた米連邦準備理事会(FRB)による上級銀行貸出担当者調査(SLOOS)
の結果が前日に発表された。
米銀各行が融資基準を一段と引き締めたほか、企業および消費者からの融資需要が軟化していることが判明した。
一方、米シリコンバレー銀行の破綻を背景に急激な信用収縮が警戒されていただけに、シリコンバレーショックがあった中では想定よりも悪くなかったとの見方が優勢だったようで、株式市場には大きな影響は今のところ見られていない。
しかし、同調査によると、1-3月に大規模・中規模企業の商業向け貸し出し需要が弱まったと報告した銀行の割合は55.6%へと大幅に上昇(昨年10-12月は31.3%)
し、リーマンショックによる世界金融危機のさなかの2009年以来の高水準となった。
また、全ての規模の企業からの融資需要が3カ月前に比べて低下していることが示され、クレジットカードや自動車ローンなどの家計向け融資に対する需要は再び軟化しているという。
FRBのハイペースでの利上げによる信用収縮への影響が時間差を伴って発現したのと同様、シリコンバレーショックを受けた信用収縮加速の影響も、もうしばらく時間差を伴って表れる可能性が十分に考えられる。
今回のSLOOSの結果は、株式市場にネガティブな影響が織り込まれるタイミングが後ずれしたことを示唆しているに過ぎないかもしれない。
株式市場は過去の経験則から、景気後退(リセッション)期に入る前に底入れすることは稀だと言われている。
今はまだ堅調なサービス消費が製造業の業績悪化を下支えする形で、経済全体が明確にリセッション入りしたとは判定されていないが、リセッション入り前にもかかわらず、足元の株式市場は非常に底堅い。
しかし、米銀の貸し出し態度のさらなる厳格化を要因とした信用収縮加速の影響が今後徐々に表れていくことが予想される。
一方、米国では堅調な労働市場を背景にインフレの高止まりが想定されており、デリバティブ市場が織り込むような年央からのFRBの利下げ転換の可能性は低いと考えられる。
景気後退が深まる中でも高水準の金利が長期にわたって据え置かれることを想定すれば、業績の一段の悪化と株価の下落は避けられないと考える。
FRBが本当に利下げを強いられる場合があるとしたら、それは相当に深刻な金融危機が起きた場合などに限られると思われ、その場合もやはり株式市場には強い逆風となるだろう。
このため、短期的には堅調も、中長期的には株式市場は軟化していくと予想される。
上述したようなシナリオに基づき、個人的には今回の米経済のリセッションは急激ではなくても、期間としてはかなり長いものになるのではないかと予想している。
一般に、株式市場は半年先を見て動くと言われるが、筆者の見解では、半年先はまだリセッション期の真っ只中と思われ、今は株式市場が底入れするタイミングではないと考えている。
他方、2009年のリーマンショックのような急激な金融危機でない限り、株式の全面安は想定しづらい。
景気に左右されにくいビジネスを展開している銘柄や、財務基盤が堅固で株主還元の強化余地がある銘柄などについては相対的な投資妙味が高まる局面と想定される。
今週、東京市場では決算発表が佳境に入っているが、今決算シーズンではそうした銘柄選別を極めるタイミングといえよう。
米国では10日に消費者物価指数(CPI)、11日に卸売物価指数(PPI)、12日にミシガン大学消費者調査など重要インフレ指標が明日以降、相次いで発表される。
これらの結果次第では相場のムードも変わり得るため、注視したい。
なお、本日は任天堂 (TYO:7974)、三菱商事 (TYO:8058)、ダイキン (TYO:6367)、ニトリHD (TYO:9843)、ローム (TYO:6963)、郵船 (TYO:9101)
などの決算が予定されている。
(仲村幸浩)
223.68円高の29173.56円(出来高概算6億2645万株)で前場の取引を終えている。
8日の米株式市場でダウ平均は55.69ドル安(-0.16%)と小反落。
地銀セクターの株価回復で金融不安が緩和したが、連邦政府の債務不履行リスクが警戒され上昇スタート後に下落に転じた。
また、米連邦準備制度理事会(FRB)による銀行融資担当者調査で融資基準が一段と厳格化したことなどが確認されると売り圧力が強まった。
一方、今週予定されている重要インフレ指標の発表を前に下値も限定的で、終盤にかけては下げ幅を縮小した。
ナスダック総合指数は+0.17%と小幅続伸。
米株高を引き継いで日経平均は70円高からスタートし、29000円を回復。
為替の円高一服や米ハイテク株の上昇を支援要因に前場中ごろからは騰勢を強める展開となり、前引け直前には29189円と240円程にまで上げ幅を広げた。
個別では、レーザーテック (TYO:6920)、アドバンテスト (TYO:6857)の半導体や、太陽誘電 (TYO:6976)、イビデン (TYO:4062)、富士電機 (TYO:6504)、三井ハイテック (TYO:6966)などのハイテクが全般上昇。
三井物産 (TYO:8031)、住友商事 (TYO:8053)の商社も総じて高い。
三井住友 (TYO:8316)、第一生命HD (TYO:8750)の銀行・保険のほか、INPEX (TYO:1605)、石油資源開発 (TYO:1662)の鉱業、住友鉱
(TYO:5713)、DOWA (TYO:5714)の非鉄金属も堅調。
今期の増益・増配見通しなどが好感されたJFE
(TYO:5411)と東京鐵鋼 (TYO:5445)が揃って急伸し、日本製鉄 (TYO:5401)、神戸製鋼所 (TYO:5406)などは連れ高。
川崎汽船 (TYO:9107)は株主還元の強化が評価されて大幅高となり、本日決算発表予定の郵船 (TYO:9101)も連れ高。
マクニカHD (TYO:3132)、LITALICO (TYO:7366)、インソース (TYO:6200)
なども決算を材料に大幅に上昇した。
一方、今期の大幅減益見通しが失望された東邦チタニウム (TYO:5727)が急落し、12日に決算を予定している大阪チタ (TYO:5726)も連れて大幅安。
リコー (TYO:7752)、ユニ・チャーム<
8113>、新日本科学 (TYO:2395)、GMOペパボ (TYO:3633)なども決算が嫌気されて大幅に下落している。
セクターでは鉄鋼、海運、保険が上昇率上位に並んだ一方、精密機器、空運のみが下落となった。
東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の80%、対して値下がり銘柄は16%となっている。
注目されていた米連邦準備理事会(FRB)による上級銀行貸出担当者調査(SLOOS)
の結果が前日に発表された。
米銀各行が融資基準を一段と引き締めたほか、企業および消費者からの融資需要が軟化していることが判明した。
一方、米シリコンバレー銀行の破綻を背景に急激な信用収縮が警戒されていただけに、シリコンバレーショックがあった中では想定よりも悪くなかったとの見方が優勢だったようで、株式市場には大きな影響は今のところ見られていない。
しかし、同調査によると、1-3月に大規模・中規模企業の商業向け貸し出し需要が弱まったと報告した銀行の割合は55.6%へと大幅に上昇(昨年10-12月は31.3%)
し、リーマンショックによる世界金融危機のさなかの2009年以来の高水準となった。
また、全ての規模の企業からの融資需要が3カ月前に比べて低下していることが示され、クレジットカードや自動車ローンなどの家計向け融資に対する需要は再び軟化しているという。
FRBのハイペースでの利上げによる信用収縮への影響が時間差を伴って発現したのと同様、シリコンバレーショックを受けた信用収縮加速の影響も、もうしばらく時間差を伴って表れる可能性が十分に考えられる。
今回のSLOOSの結果は、株式市場にネガティブな影響が織り込まれるタイミングが後ずれしたことを示唆しているに過ぎないかもしれない。
株式市場は過去の経験則から、景気後退(リセッション)期に入る前に底入れすることは稀だと言われている。
今はまだ堅調なサービス消費が製造業の業績悪化を下支えする形で、経済全体が明確にリセッション入りしたとは判定されていないが、リセッション入り前にもかかわらず、足元の株式市場は非常に底堅い。
しかし、米銀の貸し出し態度のさらなる厳格化を要因とした信用収縮加速の影響が今後徐々に表れていくことが予想される。
一方、米国では堅調な労働市場を背景にインフレの高止まりが想定されており、デリバティブ市場が織り込むような年央からのFRBの利下げ転換の可能性は低いと考えられる。
景気後退が深まる中でも高水準の金利が長期にわたって据え置かれることを想定すれば、業績の一段の悪化と株価の下落は避けられないと考える。
FRBが本当に利下げを強いられる場合があるとしたら、それは相当に深刻な金融危機が起きた場合などに限られると思われ、その場合もやはり株式市場には強い逆風となるだろう。
このため、短期的には堅調も、中長期的には株式市場は軟化していくと予想される。
上述したようなシナリオに基づき、個人的には今回の米経済のリセッションは急激ではなくても、期間としてはかなり長いものになるのではないかと予想している。
一般に、株式市場は半年先を見て動くと言われるが、筆者の見解では、半年先はまだリセッション期の真っ只中と思われ、今は株式市場が底入れするタイミングではないと考えている。
他方、2009年のリーマンショックのような急激な金融危機でない限り、株式の全面安は想定しづらい。
景気に左右されにくいビジネスを展開している銘柄や、財務基盤が堅固で株主還元の強化余地がある銘柄などについては相対的な投資妙味が高まる局面と想定される。
今週、東京市場では決算発表が佳境に入っているが、今決算シーズンではそうした銘柄選別を極めるタイミングといえよう。
米国では10日に消費者物価指数(CPI)、11日に卸売物価指数(PPI)、12日にミシガン大学消費者調査など重要インフレ指標が明日以降、相次いで発表される。
これらの結果次第では相場のムードも変わり得るため、注視したい。
なお、本日は任天堂 (TYO:7974)、三菱商事 (TYO:8058)、ダイキン (TYO:6367)、ニトリHD (TYO:9843)、ローム (TYO:6963)、郵船 (TYO:9101)
などの決算が予定されている。
(仲村幸浩)