市場の動きは常に速い。その動きの多くはノイズであり、本当に重要なものから目をそらさせるものだ。投資はチェスのように数手先のことを考えなければならない、と言うのは簡単だが、投資はさらにオープンで誰もが参加できる中で変動するものなので、先を見据えた考えというのは最初の一歩に過ぎない。
ガルリ・カスパロフ氏は間違いなく史上最高のチェス・プレイヤーであり、長年世界チャンピオンでありながら、政治活動家としてのキャリアを歩んできた。彼はまた、暗号資産の愛好家でもあり、初のNFT（非代替性トークン）コレクションを発表したばかりだ。彼がInvesting.comに語った、暗号資産に今注目する理由などについて、この記事では取り上げる。また、NFTに持続力があるかどうか、そして暗号資産はどのようにして今後直面するであろう試練を克服するのかについて、同氏の考えをまとめた。彼の経歴や執筆活動を考えると、人工知能についても聞かずにはいられなかった。
インタビューの全文はこちらでご覧いただける。インタビューの3部構成の動画と、発言内容（要旨）の抜粋を掲載しています。発言内容（要旨）は簡潔で分かりやすく編集されている。
第1部: ガルリ・カスパロフが暗号資産に注目する理由
インベスティング・ドットコム（以下「IC」）： なぜ今、暗号に興味を持たれているのでしょうか？そのきっかけは何ですか？
ガルリ・カスパロフ（以下「GK」）： 若い頃からテクノロジーには大きな興味があった。もちろん、ディープ・ブルーとは2回対戦して、1回目は勝って、2回目は負けた。私は常に最先端にいたいと思っている。なぜNFTのようなことをやっているのか、実際に説明することが重要だろう。
私のチェスにおけるモットーは「変化をもたらす」だ。そして、他の場所で違いを生み出すのはどうだろうかと考えた。私は何冊か本を書いたが、そのうちの1冊が『ディープ・シンキング：人口知性が終わり、人間の創造性が始まる場所』だ。この本は、機械に関する私の個人的な経験について書かれたものだが、一般的な人間とコンピュータについても言及している。
このような背景から、NFTは暗号資産の副産物の1つであり、関心を持ったことも何ら不思議ではない。
そしてまた、暗号資産の世界に興味を持つもう一つのきっかけがあった。2012年から、私は人権財団の理事長を務めている。私たちの代表的なイベントは、オスロ・フリーダム・フォーラムというもので、これは世界中から反体制派や人権活動家が集まる大きなイベントである。モスクワからベネズエラまで、ベラルーシからジンバブエまで、素晴らしい経験を持つ、最も魅力的な人たちに出会うことができる。私たちの組織は、彼らの資金援助を含め、非常に積極的に活動している。ベネズエラのような国では、どのような資金調達手段があるだろうか。
私は暗号資産の持つ未来を信じている。私たちの生活はどんどんデジタルになっている。だから、その生活を支える手段もデジタルになるのは自然なことだ。
そして、「その通りだが、ビットコインは変動性が大きいし、いろいろな暗号資産があるし、詐欺だらけだよ」と言う人には、「そうだよ！」と言いたい。大きな問題だが、それは暗号資産特有というわけではない。すべての新しいビジネスがそうである。
新しい産業、新しい画期的なアイデアがあると、それに伴い詐欺も出てくるが、99.9%はそのうち無くなる。ドットコム・バブルの崩壊がかつてあったが、インターネット自体が悪かったというわけではない。
第2部：地政学的状況における暗号資産の位置づけ
IC：暗号資産を政治的な側面から切り離すことは難しいです。地政学的な状況における暗号資産の役割について、どのようにお考えですか？
GK：その通り。世界の政治的な複雑さから、自分自身を切り離すことはできないし、自由な世界で起こること、選挙や公約、議論など、どんなことでもそうだ。また、自由でない世界で起こる、独裁者が暗号資産の取引を禁止する時期だと決める、というようなものからも逃れることはできない。
しかし、これもすべて、私が前に述べた議論に通じるものだ。デジタルの世界、グローバル化された世界は、中央からの分散化によって個人により多くの機会を提供することになるだろう。結局のところ、私たちの気持ちの問題なのだ。
世界中の人々が、申し訳ないが他の場所に移動する必要があると言えば、それは実現するだろう。ドルは弱い。しかしそれでもドルが基軸通貨であるのは、他の通貨がもっと悪いからだ。つまり、すべては相対的なものなのだ。今は1944年じゃない。2021年でも同じことが言えるのだ。
米国は第二次世界大戦末期のような支配的勢力ではない。したがって、米国は負債を増やすことで、社会的プログラムである政府の資金を調達することができる。なぜなら、ドルがまだ支配的だからだ。しかし、その支配力は、他国の弱さによってのみ保証されている。
私は金融の専門家ではないので、哲学的な観点に近いが、私は長期的な視点で、このように考えている。今後10年間で、ドルは暗号資産のバスケットに取って代わられる可能性が高いだろう。歴史について、私は十分に歴史の本を読み、その傾向を理解している。トレンドを分析した結果、分散化がキーワードになるにつれて、個人の保護に対する大きな需要が発生すると予想する。人々は、自分たちの生活を自分たちで管理できるようにしたいと願っている。
第3部：AI成長における課題
IC：あなたはカスパロフ原則で知られていますが、これは本来、人間＋機械＋優れたプロセスが、人間が機械に勝つというものです。この原則は、世界のどこに適用されるとお考えですか？
GK: まず、最初に言っておかなければならないのは、私は常に人類の終わりを予言する破滅論者に対抗する立場をとっているということだ。なぜなら、ターミネーターやマトリックスなど、このような物語を題材にした作品は多いが、我々の運命を知っているのは神だけだ。
機械は過去に我々を強くし、より速くした。現代の機械は人間をより賢くしてくれる。私は機械が人間活動を排除するのではなく促進するものだと考えている。しかし、その効果的な使い方を知らなければならない。カスパロフ原則の考え方は、私たちがあらゆる問題に目を向けると、ほとんどの仕事を機械がやってくれるようになるというものだ。私たち人間の存在意義など、数字における最後の小数点以下の部分くらいであることを認識しなければならない。
いくらAIが強力でも、機械には限界がある。機械はどんな閉じたシステムでも支配する。どんな閉じた枠組みでも、どんなゲームでも、チェス、囲碁、将棋、テキサス・ホールデム、ポーカー、スタークラフト。それをやった瞬間に、機械がより良い仕事をするようになる。しかし、機械はある閉じたシステムから別の閉じたシステムへデータを転送することはできない。スタークラフトのとあるマップでコンピュータを訓練し、その知識を同じようなキャラクターのいる別のスタークラフトのマップで使う場合、知識の伝達を実際に助けてくれる人間がいなければ、ゼロからまた始めなければならなくなる。
IC：「データは新しい石油である」という言葉を聞いたことがあると思います。最も多くのデータと力を持つ企業といえば、Google (NASDAQ:GOOGL)、Amazon (NASDAQ:AMZN)、Microsoft (NASDAQ:MSFT)など、これらの巨大企業だけでしょう。世界のフェイスブックが、政府の力をはるかに超えてAI開発を支配するリスクはないのでしょうか。
GK：この5年間、私はAvast softwareのセキュリティ・アンバサダーとして仕事をしてきた。そこで私は、プライバシーとセキュリティに関する何十本ものエッセイを書いた。
シンプルなメッセージは、「もしあなたがデータを生成すれば、誰かがそれを収集する」というものだ。これは人々が認識していないことで、自分のデータが収集されるのを避けることはできない。データを収集している人は常にどこかにいるからだ。
そこで問題となるのは、集められたデータがどのように使われるかだ。GoogleとFacebook (NASDAQ:FB)）の話が出たが、それは全体の一部に過ぎない。GDPRの保護なしにデータが収集されている非民主的な国があることを忘れてはいけない。
そして、あなたの言う通り、データは新しい石油だろう。というより、燃料のようなものだ。しかし、良いエンジンが必要なことに変わりはない。米国や欧州の多くの企業にとっての問題は、中国企業ほど生データにアクセスできないことだ。したがってGDPRは、それが提供するすべての利点と同時に、自由世界におけるAI産業の成長にとって障害となるものであり、非常に不利な立場に置かれていると考えざるを得ない。
この世界のグーグルやフェイスブックに関しては、私は非常に批判的な見方をしている。110年前に米国がスタンダード・オイルに対して行ったようなことをするだけで、うまくいくとは思えないが、これは検討に値する。
問題の一つは、私の論文を参照していただければと思うが、三角形が存在することだ。政府、ビッグ・テック企業、そして一般市民、これらすべてがつながっている。この三角形の中の関係はとても複雑だ。
そして残念なことに、これだけ大げさなことを言っても、私たちが何を要求しているのか、一般の人たちはまだ理解していないと感じる。「もっとセキュリティが必要だ」と言うのはいいだろう。しかし、Avast で働く私は、最も人気のあるパスワードはいまだに「12345678」でり、2 番目は「123456789」だ。これでは情報は盗み放題だ。基本的なルールに従わない場合、何が期待できるだろうか。誰か、あなたのために働いてくれる親切な人が他にいると考えてはいけない。
というわけで、これらは非常に大きなテーマだ。繰り返しになるが、これはトレード・オフの問題なのだ。残念ながら、世間はこうした問題に現実的にはあまり関心を示していない。したがって、真剣な議論が必要で、私たちはまだこの段階に入っていないといえる。
IC： 最後の質問です。あなたは暗号資産に投資していますか？
GK： はい、私は自分が信じるものに投資をしている。
IC：なるほど。投資先はどこでしょうか。Bitcoin、Ethereumなど想像される主要暗号資産でしょうか。
GK：そうです。これらは高位な成長をすると期待している。
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リスク開示書: 金融商品や暗号資産の取引は投資金額を失う高いリスクがあります。暗号資産の価格は非常にボラティリティーが高く、金融、規制、政治など、外的な要因に影響を受けることがあります。また信用取引はリスクが高いことを十分に理解してください。
金融商品または暗号資産の取引をする前に、金融市場での取引に関わるリスクやコストについて十分に理解し、専門家の助言を求めたり、ご自身の投資目的や経験値、リスク選好等を注意深く検討することを推奨いたします。
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